オレオレ詐欺の手口と対処法|親族・警察官なりすましの会話実例と家族の防犯対策
「俺だよ、俺」という電話で始まり、親族・警察官・弁護士などを装って現金を要求する「オレオレ詐欺」。警察庁の確定値によると、2025年(令和7年)の特殊詐欺の認知件数は27,832件・被害額は1,423.1億円でした。特殊詐欺とは別に集計されるSNS型投資・ロマンス詐欺(15,168件・1,834.3億円)と合わせると、約4万3千件・約3,257億円になります。本記事では、警察庁の公開情報にもとづき、実際の会話パターン・近年の手口の変化・被害にあった場合の対処法・家族で取り組める防犯対策を解説します。
オレオレ詐欺とは|2025年の特殊詐欺の被害額は1,423.1億円
警察庁はオレオレ詐欺を「親族、警察官、弁護士等を装い、親族が起こした事件・事故に対する示談金等を名目に金銭等をだまし取る(脅し取る)手口」と定義しています。息子・孫などの親族になりすまして「事故を起こした」「会社のお金を使い込んだ」などと嘘の緊急事態を伝え、現金を要求するのが典型的なパターンです。
警察庁が2026年5月22日に公表した令和7年の確定値によると、2025年1月から12月の特殊詐欺の認知件数は27,832件(前年比+6,789件、+32.3%)・被害額は1,423.1億円(+704.3億円、+98.0%)でした。SNS型投資・ロマンス詐欺の15,168件・1,834.3億円と合わせると、認知件数は約43,000件、合計被害額は約3,257億4,258万7,000円にのぼります。被害件数が多い都道府県は東京(5,879件)、大阪(4,830件)、愛知(3,505件)、神奈川(3,338件)、兵庫(3,238件)の順です(都道府県別の件数は警察庁SOS47の発生状況によるもので、同ページの注記により暫定値)。
大原則:まず電話を切り、本人に直接確認する
電話の相手が続けて話そうとしても、一度切って構いません。本物の家族であれば、かけ直した際に事情を説明できます。「今すぐ」「誰にも言わないで」という言葉が出たら詐欺を強く疑ってください。
こんな電話はオレオレ詐欺です
- 「俺だよ、俺」「声が変わった」「携帯番号が変わった」から始まる電話:本人確認をあいまいにする常套句
- 「会社のお金を使い込んだ」「交通事故を起こした」「女性を妊娠させた」という緊急事態を告げる:動揺させて冷静な判断をさせない
- 「今日中に現金が必要」「誰にも言わないで」と急かして口止めする:家族や周囲に相談する時間を与えない
- 「弁護士」「警察官」「示談担当者」を名乗る人物が次々と電話をかけてくる(劇場型):複数人が登場することで信用させようとする
- 「現金を自宅に取りに行く人を送る」「宅配便で現金を送ってほしい」と言う:本物の公的機関の職員や弁護士事務員が、現金を自宅まで受け取りに来ることはない
- 金融機関員を名乗り「キャッシュカードを保管する必要がある」とカードを要求する:預貯金詐欺・キャッシュカード詐欺盗に発展するケース
実際の手口|現金・カードの受け渡し方法とその内訳
警察庁が2026年5月22日に公表した令和7年の確定値には、被害金等を「どの方法で渡させたか」(主な被害金等交付形態)の内訳が載っています。オレオレ詐欺だけを取り出した交付形態別の公表値はないため、以下は特殊詐欺全体27,832件についての数値です。
構成比は特殊詐欺の認知件数27,832件に占める割合です。警察庁が本文で構成比を示しているのは振込型・現金手交型・キャッシュカード手交型・窃取型・電子マネー型の4区分で、暗号資産送信型と現金送付型は公表された認知件数から算出しました。「主な」交付形態だけの集計のため、合計は100%になりません。
最も多いのは振込型で、16,894件・60.7%と全体の6割を占めます。前年比は+5,834件(+52.7%)、構成比では+8.1ポイントでした。現金を直接受け取りに来る現金手交型は14.6%(前年比−0.8ポイント)、キャッシュカード手交型・窃取型は11.3%(同−6.8ポイント)です。
この内訳は年によって入れ替わっています。同じ資料の推移表では、令和元年はキャッシュカード手交型・窃取型が9,129件で最も多く、振込型は3,108件でした。令和7年はこれが逆転し、振込型16,894件に対してキャッシュカード手交型・窃取型は3,152件です。振込と手渡しのどちらか一方だけを警戒すれば足りる状況ではありません。
電話の入り口から現金の受け渡しまでで、特に注意したい型は次の3つです。
「預貯金詐欺」も同じグループの手口です。警察官・金融庁職員を名乗り「あなたの口座が犯罪に使われている」「カードを別のものに替える必要がある」とキャッシュカードや通帳をだまし取り、暗証番号を聞き出してATMで現金を引き出す手口です。詳しい見分け方は預貯金詐欺・キャッシュカード詐欺盗の手口と対処法で解説しています。また、市区町村の職員を名乗り「医療費や税金の還付金がある」とATMに誘導する還付金詐欺については還付金詐欺の手口と対処法で詳しく解説しています。
被害にあってしまったときの対処法
- 電話の相手が続けて話そうとしても、いったん電話を切ってください。本物の家族に、自分の電話帳に登録された本来の番号でかけ直して確認します
- 「現金を取りに来る人」が来ても、渡す前に110番してください。本物の公的機関の職員や弁護士事務員が現金を直接受け取りに来ることはありません
- すでに渡してしまった場合は、速やかに110番(緊急時)または警察相談専用電話(#9110)に連絡し、被害届を提出してください
- カードや通帳を渡してしまった場合は、すぐに銀行に連絡して口座凍結を依頼してください
- 振込をしてしまった場合は、振込先の口座凍結により振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金を受け取れる可能性があります。詳しくは振り込め詐欺の返金制度で解説しています
被害にあった後は自分を責めてしまう方が多いですが、オレオレ詐欺は電話の会話術・心理操作に長年特化した組織的な犯罪であり、誰でも巻き込まれる可能性があります。一人で抱え込まず、早めに家族や警察に相談することが被害の拡大を防ぐ最善の方法です。周囲から「なぜ信じてしまったのか」と責められることもありますが、犯人側は緊張状態を作り出す会話術を長期間研究しており、冷静な判断が難しくなる状況を意図的に作り出しています。
家族でできる防犯対策
- 家族間で「合言葉」を決めておく:家族だけが知っている言葉を事前に決めておけば、電話やビデオ通話でも本人確認がしやすくなる
- 固定電話に自動録音装置・番号表示サービスを設置する:多くの市区町村で無料貸し出しや購入補助を実施している
- 知らない番号からの電話は留守番電話で対応する:まず録音させ、内容を確認してからかけ直す運用にする
- ATMの利用限度額を低めに設定する:1回あたりの被害額を抑える効果がある
- 「緊急・秘密・今すぐ」という言葉が出たら詐欺を疑うと家族で共有する:この意識だけで多くの被害を防げる
高齢の家族の通帳・キャッシュカード・印鑑の管理方法については高齢の親の通帳・印鑑・キャッシュカードを守る詐欺対策で詳しく解説しています。離れて暮らす親がいる場合は、日頃から電話やビデオ通話で連絡を取り合い、不審な電話があったかどうかを気軽に相談できる関係を作っておくことも効果的な対策になります。
相談先
相談先の全体像は詐欺の相談先ガイドで詳しく解説しています。振り込め詐欺全般の手口については電話・振り込め詐欺(オレオレ詐欺)の手口一覧もご覧ください。
よくある質問
Q. 「携帯番号が変わった」「風邪で声が変わった」と言われました。本人確認する方法はありますか?
A. 一度電話を切り、自分の電話帳に登録されている本来の番号にかけ直してください。相手が続けて話そうとしても、応じずに切って構いません。事前に家族だけが知っている合言葉を決めておくと、電話やビデオ通話でも本人確認がしやすくなります。
Q. 「取りに来る人」に現金を渡してしまいました。取り戻せますか?
A. 手渡しした現金は口座凍結による返金制度の対象にならず、取り戻すことは非常に困難です。すぐに110番(緊急時)または警察相談専用電話(#9110)に連絡し、被害届を提出してください。受け取った人物の特徴・服装・話した内容を記録しておくと捜査の手がかりになります。
Q. 自動録音装置は本当に効果がありますか?
A. 効果があるとされています。「この通話は録音されます」という警告メッセージが流れる装置を設置すると、多くの詐欺グループは録音を嫌って電話を切る傾向があります。多くの市区町村で無料または低額で貸し出し・補助制度を実施しているため、お住まいの自治体に確認してみてください。