高齢の親の通帳・印鑑・キャッシュカードを守る詐欺対策【家族向けガイド】
「親の口座からいつの間にか大金が引き出されていた」――高齢者の資産を狙う詐欺は年々巧妙になっています。通帳・印鑑・キャッシュカードは、詐欺師が真っ先に狙う「資産へのカギ」です。本記事では、高齢の親を持つ家族が今すぐ実践できる具体的な対策を解説します。
高齢者の資産を狙う詐欺の主な手口
警察庁の統計によると、特殊詐欺(振り込め詐欺等)の被害者の約8割以上が60歳以上の高齢者で、2023年の被害総額は約441億円にのぼります。高齢者が詐欺に狙われやすい背景には、「まとまった資産を持っている」「判断力が低下しやすい」「一人暮らしで相談相手がいない」といった要因があります。主な手口を把握しておきましょう。
キャッシュカード詐欺盗
警察官・銀行員・市区町村職員を装い、「口座が不正利用された」「カードを交換する必要がある」などと言葉巧みにキャッシュカードを騙し取る手口です。2022年以降も高齢者被害の主要手口の一つです。
還付金詐欺(ATM詐欺)
「医療費・保険料の還付金がある」と電話し、ATMを操作させて振り込ませる手口。ATMで還付金を受け取ることはできないのに、高齢者が混乱して操作してしまうケースが多発しています。
訪問型の資産詐取
自宅に訪問して「印鑑を預かる」「通帳を確認させてほしい」と言って資産情報を聞き出したり、書類に署名・押印させて財産を移転させたりする手口もあります。
カードを「預ける」「交換する」は100%詐欺
警察・銀行・役所がキャッシュカードを「預かる」「交換する」ことは絶対にありません。こうした要求は即座に断り、家族や本物の機関に連絡してください。
通帳・印鑑の保管場所を見直す
通帳と印鑑を同じ場所に保管していると、どちらかが盗まれた時点で口座が悪用されるリスクがあります。以下のポイントを確認してください。
- 通帳と印鑑は別々の場所に保管する:引き出しの中など分かりやすい場所に一緒に入れない
- 使用頻度の低い通帳は家族が預かる:定期預金・証券口座の通帳は、本人が管理できる範囲で家族と共有する
- 印鑑の本数を整理する:使っていない印鑑が複数ある場合は管理を一本化する
- 金庫の活用:市販の小型金庫(数千円〜)に通帳・印鑑・カード類をまとめて保管する方法も有効
また、「訪ねてきた人に通帳や印鑑の場所を見せない」「玄関先で資産の話をしない」という習慣を親御さんに繰り返し伝えることが重要です。
キャッシュカードの引き出し限度額を下げる設定方法
万が一キャッシュカードが詐欺師の手に渡っても、1日あたりの引き出し限度額を下げておけば被害額を抑えられます。多くの銀行でATMや窓口、インターネットバンキングから設定変更が可能です。
主要銀行での設定方法
- ゆうちょ銀行:ATMまたは窓口で「ATMご利用限度額の変更」が可能。1日あたりの払戻限度額を5万円・10万円単位で設定できる
- 三菱UFJ銀行:インターネットバンキング(三菱UFJダイレクト)またはATMから1日のご利用限度額を変更可能
- 地方銀行・信用金庫:窓口に来店して申請するケースが多い。親と一緒に窓口で相談すると良い
日常の生活費として使う金額を想定し、それ以上の額を引き出せないよう設定しておくと安心です。たとえば月5万円の生活費なら、1日の限度額を3万円程度に設定するのが目安です。
限度額の変更は窓口で一緒に手続きする
インターネットバンキングに不慣れな高齢者の場合は、家族が同行して窓口で設定するのがスムーズです。「詐欺対策として下げたい」と伝えれば、銀行員が丁寧に対応してくれます。
「代理人カード」の注意点
代理人カードとは、本人の口座から引き出しができる追加カードで、家族など信頼できる人に渡すために発行されます。便利な一方で、いくつかの注意点があります。
- 代理人カードでも引き出し限度額は本人カードと共有:本人カードと合計で1日の限度額内に収まる設定になっていることが多い
- 代理人カードを悪用されるリスク:家族以外の第三者(業者・ヘルパーなど)が代理人カードを持っている場合は要注意
- 不要になったら速やかに解約:使わなくなった代理人カードは放置せず、本人または家族が窓口で解約手続きを行う
- 代理人カードの発行状況を定期確認:親の通帳に記載されている代理人カードの発行枚数を確認する
正当な代理人カードであっても、誰が持っているかを把握していることが大切です。
認知症が進んだ場合の成年後見制度
認知症などで判断能力が低下した場合、法律上の手続きや財産管理を本人に代わって行う「成年後見制度」を利用できます。
成年後見制度の種類
- 法定後見:すでに判断能力が低下している場合に家庭裁判所に申立てをして後見人を選任してもらう制度
- 任意後見:まだ判断能力があるうちに「将来、判断能力が低下した場合に備えて」後見人を事前に決めておく制度
成年後見制度のメリット・デメリット
- メリット:法的な権限で財産を守れる。詐欺師が接触しても法律的に契約を取り消せる
- デメリット:後見人(特に弁護士・司法書士などの専任後見人)への報酬が毎月発生する。家族が後見人になれないケースもある
申立てには戸籍謄本・診断書などが必要で、家庭裁判所への申立て費用として数万円程度かかります。詳細は最寄りの家庭裁判所または市区町村の窓口に相談してください。
家族信託との違い
家族信託は、成年後見制度とは別の仕組みで、財産管理を家族に任せるための契約です。
- 家族信託:本人(委託者)が信頼できる家族(受託者)に財産の管理・処分を任せる契約。認知症になる前に設定しておく必要がある
- 成年後見との違い:家族が柔軟に管理できる・報酬が原則不要・資産運用・売却なども委ねられる一方、設定に公証人費用(数十万円)がかかる
- メリット:認知症になった後でも家族が銀行取引や不動産売却ができるため、口座凍結のリスクを回避できる
「元気なうちに」相談しておくことが重要
家族信託・任意後見はいずれも「判断能力があるうち」に手続きが必要です。認知症の診断が下りてからでは設定できなくなる場合があります。早めに司法書士・弁護士に相談することをお勧めします。
定期的な残高確認の習慣化
詐欺被害の早期発見に最も効果的なのは、定期的な残高・取引明細の確認です。以下の方法を参考にしてください。
- 通帳記帳を月1回の習慣に:金融機関のATMで月に一度記帳するだけで、不審な引き出しを早期に発見できる
- インターネットバンキングの取引通知メール:引き出しや振込があった際にメールで通知される設定を有効にする(対応している銀行のみ)
- 家族が一緒に確認する機会を作る:月1回の「通帳確認日」を家族の習慣にする
- 不審な振込先・引き出しはすぐに銀行へ:身に覚えのない取引は、すぐに銀行の窓口またはコールセンターに連絡する
詐欺師は少額から始めて相手の反応を見ることが多いです。早期に気づくことで被害の拡大を防げます。