還付金詐欺の手口と対処法|ATM誘導・ネットバンキング詐欺の見分け方
「税金や医療費の還付金があります」という電話をきっかけに、ATMやネットバンキングを操作させてお金をだまし取る「還付金詐欺」。国民生活センターへの相談件数は年々増加しており、被害者の約95%が60歳以上という特徴があります。本記事では、実際の手口・電話の会話パターン・被害にあった場合の対処法を、国民生活センターと警察庁の公開情報にもとづいて解説します。
還付金詐欺とは|相談件数は5年で最高に
還付金詐欺とは、市役所・税務署・年金事務所などの職員を名乗って自宅の固定電話にかけてきて、「税金や保険料、医療費の過払い金が還付される」と伝え、その受け取り手続きとしてATMやネットバンキングを操作させ、実際には犯人側の口座にお金を振り込ませる詐欺の手口です。振り込め詐欺(特殊詐欺)の一種に分類されます。
国民生活センターの発表によると、還付金詐欺に関する相談件数(PIO-NET登録分)は2018年度2,759件、2019年度3,007件、2020年度2,351件、2021年度4,343件、2022年度4,849件と推移しており、2022年度は過去5年間で最高となりました。トラブルにあわれた方の約95%が60歳以上という高齢者への偏りも特徴です。
大原則:ATMで還付金を受け取ることは絶対にできない
市役所・税務署・年金事務所などがATMを使って還付金の手続きをすることは一切ありません。「ATMに向かってください」という指示そのものが詐欺のサインです。
こんな電話が来たら詐欺です
還付金詐欺の電話には、共通するパターンがあります。以下のいずれかに当てはまる電話がかかってきたら、詐欺を強く疑ってください。
- 「還付金がある」という自治体・年金事務所からの電話:健康保険料・年金・医療費・介護保険料などの「過払い金」「還付金」があると告げてくる
- 「本日中」「期限が今日まで」という時間的な焦らせ方:払い戻しに期限があると強調し、じっくり考える時間を与えない
- 「携帯電話を持ってATMに向かってほしい」という指示:自宅の固定電話で連絡してきたにもかかわらず、携帯電話を持ってATMへ移動するよう指示する
- ATMに着いた後、電話越しに操作方法を指示してくる:「私が言った通りにボタンを押してください」と、還付を受け取る操作だと思わせて実際は振込操作をさせる
- 役所の担当者の後に金融機関の職員を名乗る人物が登場する(劇場型):複数の人物が入れ替わりで電話し、信用させようとする
実際の手口|劇場型勧誘とネットバンキング誘導
国民生活センターに寄せられた相談事例をもとに、代表的な手口を整理しました。
最も多いパターン 市役所を名乗る電話→「健康保険の還付金がある」→近くのATMへ移動を指示→電話で操作方法を伝える 実際には振込操作をさせられ、犯人の口座にお金が渡る
近年増加 「ATMより簡単」とネットバンキングでの手続きを勧め、口座番号・暗証番号を聞き出す ATM以外の手段でも還付金詐欺は成立する。「簡単だから」という誘導自体が危険信号
近年は青色の封筒で「還付通知」を装った郵便物を送りつけたうえで電話をかけてくるケースも報告されています。封筒や書面が「本物らしく」見えても、電話でATMやネットバンキングへの誘導があれば詐欺と判断してください。
また、還付金詐欺は単発の電話で終わらないことが多く、一度断っても数日後に別の担当者を名乗って再度電話がかかってくることがあります。「前回とは違う部署から」「訂正の連絡です」といった口実で接触してくる場合も、内容が「お金が返ってくる」話である限り詐欺だと判断してください。同じ番号や似た名乗り方の電話が続く場合は、着信履歴を残したうえで警察や消費生活センターに相談すると、地域での注意喚起や捜査の手がかりになります。
被害にあってしまったときの対処法
- すでに振込・送金をしてしまった場合は、直ちに自分の銀行と振込先の金融機関の両方に連絡し、口座凍結の依頼をしてください(凍結が早いほど資金が残っている可能性が高くなります)
- 警察相談専用電話「#9110」に連絡し、被害を報告してください。緊急性が高い場合は110番でも構いません
- 口座番号・暗証番号・個人情報を伝えてしまった場合は、銀行にすぐ連絡してパスワード変更・口座の利用停止を依頼してください
- 振込先の口座が凍結された場合、振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金の申請ができる可能性があります。手続きの詳細は振り込め詐欺の返金制度で解説しています
- 最寄りの消費生活センター(消費者ホットライン188)にも相談し、今後の対応についてアドバイスを受けてください
電話に出てしまっただけなら、まず連絡先を確認
電話で個人情報や還付金の話をされただけで、実際にATMやネットバンキングを操作していない場合は、金銭的な被害は発生していません。ただし、同じ相手や別の詐欺グループから再度連絡が来る可能性があるため、家族に共有し、次に電話がかかってきたときの対応を決めておくと安心です。
家族・高齢者を守るための予防策
還付金詐欺は被害者の約95%が60歳以上であり、離れて暮らす親や高齢の家族を守るための備えが重要です。
- 固定電話に番号表示・非通知拒否サービスを設定する:発信元が分かれば、不審な番号からの電話に出ない判断ができる
- 留守番電話を基本設定にする:知らない番号はまず留守電に応答させ、内容を確認してからかけ直す運用にする
- 「役所やATMからお金は受け取れない」を家族全員で共有する:この一点さえ覚えておけば大半の還付金詐欺を防げる
- ATMの利用限度額を低めに設定する:1回の被害額を抑える効果がある
- 国際電話の利用休止を申し込む:海外の電話番号を使った特殊詐欺が増えているため、普段海外に電話しない家庭では有効な対策
通帳やキャッシュカードの管理方法、代理人カードの活用など、より詳しい家族向けの対策は高齢の親の通帳・印鑑・キャッシュカードを守る詐欺対策で解説しています。
相談先
相談先の全体像や準備しておくべき記録については詐欺の相談先ガイドで詳しく解説しています。振り込め詐欺全般の手口については電話・振り込め詐欺(オレオレ詐欺)の手口と対策もご覧ください。還付金と混同されやすい給付金・助成金詐欺については給付金・助成金詐欺の手口と対処法で違いを解説しています。
よくある質問
Q. 還付金詐欺で「ATMに行くように」と言われたらどうすればいいですか?
A. 絶対にATMに向かわないでください。役所・年金事務所・税務署がATMで還付手続きを行うことは一切ありません。電話をすぐに切り、番号を自分で調べて役所の担当窓口に確認してください。
Q. すでにATMで振込操作をしてしまった場合、お金は戻りますか?
A. 必ず戻るとは限りませんが、振込先の口座が犯罪利用口座として凍結された場合、振り込め詐欺救済法に基づく被害回復分配金を受け取れる可能性があります。まず警察(#9110)と振込先の金融機関に連絡してください。
Q. 還付金詐欺の電話に出てしまっただけで被害はありますか?
A. 電話に出ただけで金銭的被害が生じることは基本的にありません。ただし名前・住所・生年月日などの個人情報を伝えてしまった場合は、その情報が別の詐欺に使われる可能性があるため、家族や警察に相談しておくと安心です。