「必ず儲かる」に騙された老後の貯金300万円
被害の経緯
退職後、老後の資金を増やしたいと思っていたところ、SNSで「元銀行員が教える安全な投資」という広告を見ました。担当者はとても親切で、最初は5万円を入れると10日で8万円になって返ってきました。信頼して300万円を振り込んだところ、その後連絡が取れなくなりました。家族にも言えず、3ヶ月間一人で抱えていました。
この事例は、一般的な手口の類型をもとに再構成したものです。特定の個人の体験そのものではありません。
この事例から学ぶこと
最初に少額を「成功」させるのは信頼させるための典型的な手口。元本保証・高利回りは詐欺のサイン。
この事例は「ポンジ・スキーム」と呼ばれる詐欺の典型的なパターンです。最初に小額を投資させて確実に利益を返すことで、被害者の信頼を獲得します。その後、大きな金額を投資させてから逃げるという手口です。
この詐欺の特徴
- 「元銀行員」「元証券マン」など権威ある経歴を名乗る
- SNS広告で不特定多数に接触し、信頼関係を構築する
- 「安全」「確実」「保証付き」という言葉を多用する
- 最初の少額投資は本当に返金して信頼させる
- 一度信頼させてから大金を騙し取る
被害を防ぐために
金融商品取引法は、内閣総理大臣の登録を受けていない者が金融商品取引業を行うことを禁じています(第29条)。登録を受けた業者であっても、不確実な事項について断定的判断を提供したり、確実であると誤解させるおそれのあることを告げて勧誘したりすることは禁じられています(第38条第2号)。条文は下の「法律ではどう定められているか」に載せています。SNSで知り合った相手から投資を勧められたら、まず金融庁の「金融サービス利用者相談室(0570-016811)」に相談してください。また、勧誘者の会社名を金融庁のウェブサイトで必ず確認しましょう。
被害にあったら
- 警察(110番)または最寄りの警察署の生活安全課に相談
- 消費者ホットライン(188番)に連絡
- 弁護士への相談(法テラス: 0570-078374)
- 振込先口座の凍結申請(銀行の不正利用窓口へ)
投資詐欺で使われる接触の経路
SNSの広告、マッチングアプリ、LINE/Telegramグループへの招待など。老後の資金を標的にした高齢者向け詐欺は特に悪質です。「退職金を2倍にできる」などの言葉には十分注意してください。
法律ではどう定められているか
投資の勧誘に関する規制(金融商品取引法)
金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第29条は「金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない」と定めています。登録を受けていない者が投資を勧誘して契約を結ばせること自体が、この規定に反します。
登録を受けた業者であっても、第38条第1号は「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為」を禁じています。同条第2号は「顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為」を禁じています。
さらに第39条第1項第1号は、顧客に損失が生ずることとなった場合、またはあらかじめ定めた額の利益が生じないこととなった場合に、その全部または一部を補塡するため財産上の利益を提供する旨を申し込んだり約束したりする行為を禁じています(損失補塡等の禁止)。
つまり「元本保証」「年利○%を保証」という言葉は、相手が登録業者であれば第38条第2号や第39条が禁じている話であり、登録業者でなければそもそも第29条に反します。どちらであっても、そのまま受け取ってよい約束ではありません。金融庁は登録を受けた金融商品取引業者の一覧を公表しているので、相手の商号で確認できます。
条文:e-Gov法令検索(法令ID 323AC0000000025)
詐欺罪(刑法)
刑法(明治40年法律第45号)第246条第1項は「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する」と定めています。同条第2項は、財物ではなく「財産上不法の利益」を得た場合、または他人に得させた場合も同じ刑にすると定めています。
第246条の2(電子計算機使用詐欺)は、人ではなく「人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り」、それによって財産上不法の利益を得た場合も、同じく十年以下の拘禁刑に処すると定めています。
条文:e-Gov法令検索(法令ID 140AC0000000045)
振込先の口座からお金を取り戻す制度(振り込め詐欺救済法)
振込によって金銭をだまし取られた場合には、「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」(平成19年法律第133号)にもとづく手続きがあります。
同法第12条第1項は、被害回復分配金の支払を受けようとする者は、支払申請期間内に、申請書に資料を添付して「対象預金口座等に係る金融機関に申請をしなければならない」と定めています。申請先は振込先の口座がある金融機関です。同条第3項は、この申請を、振込みの依頼をした金融機関を経由して行うこともできると定めています。
同法第11条第2項は、その支払申請期間について「同項の規定による公告があった日の翌日から起算して三十日以上でなければならない」と定めています。法律が定めているのは30日という下限であり、期間は無期限ではありません。口座が凍結されているか、公告が出ているか、申請期間がいつまでかは、振込先の金融機関に問い合わせて確認してください。
この制度は、凍結された口座に残っている資金を被害者に分配するものです。口座に資金が残っていなければ分配は行われず、支払われる額も失った額と同じとは限りません。
条文:e-Gov法令検索(法令ID 419AC1000000133)
条文は e-Gov 法令検索で公開されている法令本文から引用しています。ある行為がこれらの条文に当たるかどうかを判断するのは捜査機関と裁判所です。このページは条文を示すだけで、個別の事案についての法的な判断を示すものではありません。