相続税対策と言われた「タコ部屋投資」で多額の損失
被害の経緯
銀行の担当者から「相続税対策に最適な不動産ファンド」を紹介されました。「元本割れリスクは極めて低い」と説明され、パンフレットも立派だったため800万円を投資しました。2年後に運用会社が破産し、回収できたのはわずか30万円程度でした。銀行は「あくまで紹介」として責任を認めませんでした。
この事例は、一般的な手口の類型をもとに再構成したものです。特定の個人の体験そのものではありません。
この事例から学ぶこと
紹介したのが誰であっても、元本が保証されない商品はある。「リスクは極めて低い」と言い切る説明は、その根拠を書面で確認する。
金融機関(銀行・証券会社)の窓口や担当者から紹介される投資商品でも、リスクの高い商品や詐欺的な商品が含まれる場合があります。特に高齢者の相続税対策需要を狙った商品には注意が必要です。
この詐欺・悪質商法の特徴
- 銀行・証券会社の担当者が「お客様だけに」と勧誘
- 「相続税対策」「節税」など高齢者の関心が高いテーマを使う
- 「元本割れリスクが低い」「安全な運用」など誤解を招く説明
- プロが作った立派な資料で信頼性を演出
- 実際には高リスクまたは詐欺的な商品
被害を防ぐために
銀行員や証券会社の担当者の勧誘は、その会社の利益になる商品を販売していることを意識しましょう。投資前に家族や他の専門家(ファイナンシャルプランナーなど)に相談することが重要です。「元本保証」「元本割れリスクが低い」という表現は法律で制限されており、これを言う業者は信頼できません。
被害にあったら
- 金融ADR(裁判外紛争解決手続)の利用。銀行の窓口で購入した金融商品は全国銀行協会相談室(0570-017109)、証券会社・投資信託会社が販売した商品は証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC・0120-64-5005)が窓口です
- 弁護士への相談(適合性原則違反・説明義務違反の可能性)
- 消費生活センター(188)への相談
- 金融庁への情報提供
法律ではどう定められているか
投資の勧誘に関する規制(金融商品取引法)
金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第29条は「金融商品取引業は、内閣総理大臣の登録を受けた者でなければ、行うことができない」と定めています。登録を受けていない者が投資を勧誘して契約を結ばせること自体が、この規定に反します。
登録を受けた業者であっても、第38条第1号は「金融商品取引契約の締結又はその勧誘に関して、顧客に対し虚偽のことを告げる行為」を禁じています。同条第2号は「顧客に対し、不確実な事項について断定的判断を提供し、又は確実であると誤解させるおそれのあることを告げて金融商品取引契約の締結の勧誘をする行為」を禁じています。
さらに第39条第1項第1号は、顧客に損失が生ずることとなった場合、またはあらかじめ定めた額の利益が生じないこととなった場合に、その全部または一部を補塡するため財産上の利益を提供する旨を申し込んだり約束したりする行為を禁じています(損失補塡等の禁止)。
つまり「元本保証」「年利○%を保証」という言葉は、相手が登録業者であれば第38条第2号や第39条が禁じている話であり、登録業者でなければそもそも第29条に反します。どちらであっても、そのまま受け取ってよい約束ではありません。金融庁は登録を受けた金融商品取引業者の一覧を公表しているので、相手の商号で確認できます。
条文:e-Gov法令検索(法令ID 323AC0000000025)
詐欺罪(刑法)
刑法(明治40年法律第45号)第246条第1項は「人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の拘禁刑に処する」と定めています。同条第2項は、財物ではなく「財産上不法の利益」を得た場合、または他人に得させた場合も同じ刑にすると定めています。
第246条の2(電子計算機使用詐欺)は、人ではなく「人の事務処理に使用する電子計算機に虚偽の情報若しくは不正な指令を与えて財産権の得喪若しくは変更に係る不実の電磁的記録を作り」、それによって財産上不法の利益を得た場合も、同じく十年以下の拘禁刑に処すると定めています。
条文:e-Gov法令検索(法令ID 140AC0000000045)
振込先の口座からお金を取り戻す制度(振り込め詐欺救済法)
振込によって金銭をだまし取られた場合には、「犯罪利用預金口座等に係る資金による被害回復分配金の支払等に関する法律」(平成19年法律第133号)にもとづく手続きがあります。
同法第12条第1項は、被害回復分配金の支払を受けようとする者は、支払申請期間内に、申請書に資料を添付して「対象預金口座等に係る金融機関に申請をしなければならない」と定めています。申請先は振込先の口座がある金融機関です。同条第3項は、この申請を、振込みの依頼をした金融機関を経由して行うこともできると定めています。
同法第11条第2項は、その支払申請期間について「同項の規定による公告があった日の翌日から起算して三十日以上でなければならない」と定めています。法律が定めているのは30日という下限であり、期間は無期限ではありません。口座が凍結されているか、公告が出ているか、申請期間がいつまでかは、振込先の金融機関に問い合わせて確認してください。
この制度は、凍結された口座に残っている資金を被害者に分配するものです。口座に資金が残っていなければ分配は行われず、支払われる額も失った額と同じとは限りません。
条文:e-Gov法令検索(法令ID 419AC1000000133)
条文は e-Gov 法令検索で公開されている法令本文から引用しています。ある行為がこれらの条文に当たるかどうかを判断するのは捜査機関と裁判所です。このページは条文を示すだけで、個別の事案についての法的な判断を示すものではありません。